減算命令(SUB)と有限リング(環状メモリ)におけるモジュラ算術
Opcode(命令の種類)を切り替える意味と、0より小さくなった数値が円環空間でどう振る舞うか
命令(Opcode)の部屋をクリックすると、別の命令に切り替えることができます。 - ADD: 足し算(Add) - SUB: 引き算(Subtract)
現在、0001 番地のデータ箱には 10 が入っており、0000 番地は ADD.AB #3, $1(10に3を足す)になっています。
🎯 やってみよう 0000 番地の 命令プルダウン(ADD) をクリックして SUB(引き算) に変更し、[STEP] を押して 0001 番地のB値を 10 - 3 = 7 にしましょう!
1. Opcode(命令コード)はALUへの「機能切り替えスイッチ」
Step 10では、初めて一番左の部屋である「命令(Opcode)」のプルダウンを操作し、『ADD(足し算)』から『SUB(引き算)』へと切り替えて、0001 番地のデータ『10』から『3』を引いて『7』にする実験を行いました。
『ADD.AB #3, $1』と『SUB.AB #3, $1』を見比べてみてください。Aフィールド(#3)も、Bフィールド($1)も、修飾子(.AB)も全く同じです。変わったのは先頭の『ADD』か『SUB』かという命令名(Opcode)だけです。
ハードウェアの視点で見ると、どちらの命令も「0000番地のA値(3)と、0001番地のB値(10)をALU(算術論理演算装置)へ運び、計算結果を0001番地のBへ書き戻す」というデータの通り道(データパス)は100%共通しています。Opcodeの役割とは、ALUに対して「今回は足し算回路(+)ではなく、引き算回路(-)のスイッチを入れて計算せよ!」という制御信号(Control Signal)を送ることに他なりません。
Inputs: A = 3, Target B = 10
├─ If Opcode == ADD ──► ALU computes 10 + 3 = 13
└─ If Opcode == SUB ──► ALU computes 10 - 3 = 7 ──► Write 7 to [0001].B2. もし「0」から「1」を引いたらどうなる?(モジュラ算術の秘密)
今回は「10 - 3 = 7」という普通の正の引き算でしたが、ここでコンピュータ科学における極めて重要な問いを考えてみましょう。もしデータ箱の数値が『0』のときに、『SUB.AB #1, $1』を実行して 0 から 1 を引いたら、箱の中の数字はどうなるでしょうか?
普通の算数では「-1」になりますし、エディタの表示上も分かりやすく『-1』と表示されることがあります。しかし、CoreWarの仮想計算機(MARS)の内部ルール(ICWS-94規格)では、メモリ空間は「0番地から799番地(Laboratoryでは7999番地)までがぐるりと輪っかのようにつながった円環(リング)構造」をしています。
時計の文字盤を思い浮かべてください。12時間計の時計で「0時」から「1時間」を引き算(逆回転)すると、「-1時」ではなく「11時」になりますね。これと全く同じように、800マスのCoreWar宇宙では、すべての数値は「800で割った余り(Modulo 800)」として扱われます。したがって、内部的には『0 - 1 = 799(1つ後ろ=1つ上の番地)』と完全に等価になります。これを数学で「剰余演算(Modular Arithmetic)」と呼びます。
3. 2の補数と「引き算=逆方向への足し算」の統一性
この「円環(リング)の上では、1を引くこと(-1)と、799を足すこと(+799)が同じ場所に辿り着く」という性質は、実はCoreWarだけでなく、現代のすべてのCPUが採用している「2の補数(Two's Complement)」という負数の表現方式そのものです。
現代の64ビットCPUや32ビットCPUの内部には、実は本来の意味での「引き算専用の巨大回路」は存在しません。CPUは引き算(A - B)を行うとき、Bのビットを反転させて1を足した「補数(-B)」を作り、それを加算器(Adder)に通すことで、引き算を「足し算」として処理しています。
CoreWarにおいて『SUB』命令は、数値を減らすカウントダウンタイマーを作るだけでなく、「自分の番地よりも上(マイナス方向)に向かって爆弾を投げるポインタ」を動かすためにも大活躍します。
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